この記事では、定期健康診断が義務付けられていることや受診するべき人、検査項目まで解説しました。さらに、定期健康診断以外に義務付けられている健康診断も紹介するので、事業者の方はぜひ参考にしてみてください。
企業に義務付けられている「定期健康診断」。
「具体的にどんな健診なの?」「義務付けられている人って誰?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は定期健康診断を受診するべき人や検査項目、さらに費用まで解説します。
定期健康診断とは
定期健康診断とは、1年以内ごとに1回行なわれる検査のことです。
生活習慣病をはじめとした、様々な病気の早期発見や早期治療を目的に実施されています。
検査項目は11種類ありますが、医師の判断で省略される項目もあるんです。
定期健康診断は義務
企業が定期健康診断を実施することは、労働安全衛生法第66条1項によって義務付けられています。
実施しなければ、どのような罪に問われるのか見ていきましょう。
実施しないと罰金
定期健康診断を企業が実施しない場合、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金が発生します。
「健康診断は直接会社の運営と関係ないのに…」と思うかもしれませんが、社員の健康をサポートするのは健康経営の面で非常に重要です。
もちろん、社員が定期健康診断を受けなければいけないことも、労働安全衛生法第66条にて定められています。
このため、受診を拒否された場合は、就業規則を理由に懲戒処分にすることが可能です。
情報漏洩も罪に問われる
社員が受けた定期健康診断の結果が漏洩した場合も、罪に問われてしまいます。
罰則として、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が定められているので、情報の管理には注意しましょう。
社員の健康情報はプライバシーに関わるものであり、むやみに扱って良いものではありません。
情報の保管や利用・開示の条件範囲など、管理に関する健康管理規程を定めておくことがおすすめです。
定期健康診断を義務付けられている人とは
定期健康診断を受診しなければいけない人は、「常時使用する労働者」とされています。
常時使用する労働者の定義は法令によって異なりますが、定期健康診断を義務付けられた対象者は以下の通りです。
- 正社員
- 1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上勤務する者
- 契約更新等により1年以上使用される予定の者
上記のうち1つでも当てはまる社員なら、アルバイトやパート、派遣社員であっても定期健康診断を受ける義務があります。
また、所定労働時間が正社員の4分の3未満であっても、2分の1以上であれば定期健康師団は受診したほうがよいでしょう。
定期健康診断の検査項目とは
定期健康診断では、どのような検査をすることができるのでしょうか?
具体的な検査項目について解説します。
検査項目の一覧
定期健康診断で検査できるのは、以下11の項目です。
検査できる11の項目 |
1.既往歴及び業務歴の調査 2.自覚症状及び他覚症状の有無の検査 3.身長・体重・腹囲・視力・聴力の検査 4.胸部エックス線検査・喀痰検査 5.血圧の測定 6.貧血検査(血色素量及び赤血球数) 7.肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP) 8.血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロー ル、血清トリグリセ ライド) 9.血糖検査 10.尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) 11.心電図検査 |
医師の判断で省略できる項目
定期健康診断では、通常先ほど紹介した11の項目を検査します。
しかし、自覚症状や他覚症状、既往歴などを踏まえたうえで、医師が必要ないと感じた場合はいくつかの診査を省略することが可能です。
下記に、省略できる項目をまとめてみました。
省略できる項目 | 対象者 |
身長 | 20歳以上の人 |
貧血検査・肝機能検査・血中脂質検査・血糖検査・心電図検査 | 35歳未満の人及び36~39歳の人 |
腹囲 | 40歳未満(35歳を除く)の人など |
胸部エックス線検査 | 40歳未満のうち「20歳、25歳、30歳及び35歳」に該当しない人など |
喀痰検査 | 胸部エックス線検査を省略された人など |
定期健康診断の費用
定期健康診断は、法律によって定められている義務なので、費用は全て会社が負担します。
定期健康診断の費用は保険適用外なので、相場は医療機関によって異なりますが、大体5,000〜15,000円ほどのことが多いでしょう。
一方、人間ドックなど法律で義務化されていない健康診断は、基本的に社員が全て負担します。
ただ、健康保険組合などによって補助金が出る場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
定期健康診断を実施するときに押さえておくこと
定期健康診断を実施するには、以下3つのポイントを押さえるべきです。
- 健康診断結果を保管しなければいけない
- 受診結果を報告しなければいけない
- 受診後のフォローも行う
それぞれ、どのような点を意識するべきか解説しましょう。
健康診断結果を保管しなければいけない
定期健康診断が終了したら、健康診断個人票を作成し、5年間保存しなければいけません。
保存には労働者の同意が必要なので、注意してくださいね。
受診結果を報告しなければいけない
常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断の結果を所轄労働基準監督署長に報告する必要があります。
50人未満の場合は報告なしでも問題ありませんが、定期健康診断の実施は義務なので必ず行いましょう。
受診後のフォローも行う
健康診断で社員に異常が見つかった場合、事業者は医師の意見を聞き、状況に応じて作業の転換や労働時間の短縮など、適切な処置を行なわなければいけません。
また、健康の保持を推奨するため、社員に医師や保健師による保健指導の受診を勧める義務もあります。
【一般診断】定期健康診断以外の義務づけられた検査
定期健康診断以外にも、義務付けられた検査はいくつかあります。
こちらでは、「一般診断」としてまとめられている4つの診断を紹介しましょう。
雇入時の健康診断
雇入時の健康診断とは、雇い入れの際に行う健康診断を指します。
対象者は定期健康診断と同じく常時使用する労働者であり、検査できる項目は以下の通りです。
検査できる11の項目 |
1.既往歴及び業務歴の調査 2.自覚症状及び他覚症状の有無の検査 3.身長・体重・腹囲・視力・聴力の検査 4.胸部エックス線検査 5.血圧の測定 6.貧血検査(血色素量及び赤血球数) 7.肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP) 8.血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロー ル、血清トリグリセ ライド) 9.血糖検査 10.尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) 11.心電図検査 |
特定業務従事者の健康診断
特定業務従事者の健康診断とは、「多量の高熱物体を取り扱う業務」など特定の業務に関わる社員に義務付けられた検査です。
特定の業務に配置替えの際、6ヶ月以内ごとに1回健康診断を行う必要があります。
海外派遣労働者の健康診断
海外派遣労働者の健康診断とは、海外に6ヶ月以上派遣する社員に義務付けられた検査です。
海外から帰国後、国内業務に就く際に健康診断を行なわなければいけません。
給食従業員の検便
給食従業員の検便とは、事業に附属する食堂や給食の業務に従事する社員に向けた検査です。
雇入れや配置換えの際に行う必要があります。
【特殊健康診断】定期健康診断以外の義務づけられた検査
特殊健康診断とは、以下の有害な業務に常時従事する社員に義務付けられた検査です。
特殊健康診断を義務付けられている業務 |
1.放射線業務 2.有機溶剤業務 3.鉛業務 4.四アルキル鉛等業務 5.特定化学物質の製造、又は取り扱う業務 6.高圧室内業務又は潜水業務 7.除染等業務 8.石綿の粉じんを発散する場所における業務 |
雇入れ時、配置替えの際、さらに6月以内ごとに1回特殊健康診断を行う必要があり、義務付けられた検査項目は業務によって異なります。
以下では、例として放射線業務に従事する労働者の検査項目をまとめてみました。
放射線業務に従事する労働者が検査できる5の項目 |
1.被ばく歴の有無の調査及びその評価 2.白血球数及び白血球百分率の検査 3.赤血球数および血色素量またはヘマトクリット値の検査 4.白内障に関する眼の検査 5.皮膚の検査 |
まとめ|定期健康診断は会社の義務!必ず行なおう
今回は、定期健康診断の対象者や行う検査について紹介しました。
定期健康診断は会社と従業員の義務であり、実施されなければ罪に問われてしまいます。
健康診断業務にかかる手間を省きたいなら、外注するのがおすすめです。
気になる方は、「メディカルサポート 健康診断業務代行」へ問い合わせてみましょう!